TOP 開示資料 トピック 賠償事例 裁決事例 関係法令 法令翻訳 英訳情報 用語英訳


<<  戻る


▼ 裁決事例集 No.58 - 97頁
 請求人らは、限定承認により相続した不動産を債務弁済のために譲渡したところ、原処分庁は、所得税法第59条第1項の規定を適用し、被相続人についてみなし譲渡所得の課税を行った。
 請求人らは、本件においては、本件譲渡に係る譲渡所得課税のみを行うこととするほうが本件共同相続人の利益になることから、相続人の保護という限定承認の趣旨に立ち返って本件法規定を解釈し、被相続人に係るみなし譲渡所得課税は行われるべきではない旨主張する。
 しかしながら、本件法規定は、被相続人の所有期間中における資産の値上がり益を被相続人の所得として課税し、これに係る所得税額を債務として清算することにより、限定承認をした相続人が相続財産を超えて負担することがないように規定されているものであり、本件法規定にいう限定承認の意義については民法の規定と同義に解することが相当であって、請求人らは限定承認によって本件不動産を取得しているのであるから、被相続人についてみなし譲渡所得課税が行われたのである。
 なお、請求人らは、本件法規定が適用される結果、適用されない場合よりも納付すべき税額の点で不利益となり、限定承認により保護される相続人の利益が保護されないこととなるとも主張するが、限定承認の制度は、被相続人の債務等の額自体を縮減することによってではなく、相続によって得た財産の限度において当該債務等の弁済の責任を負わせることにより、相続人の保護を図ろうとするものであって、納付すべき税額の多寡は限定承認の機能とは別個のものであるから、請求人らの主張には理由がない。
 次に、請求人らは、仮に本件法規定が文言のとおり適用されるとしても、本件譲渡は、相続債権者への公告及び催告もせず、また、民法が定める換価手続である競売にもよらずに譲渡している上、譲渡代金のうち債務弁済後の残額を自己のために消費しているので、民法第921条第3項に規定する「私にこれを消費」に該当し、単純承認したものと見なされるから本件法規定を適用することはできない旨主張する。
 しかしながら、競売によらずに任意売却等したとしても、これらは単に手続違反にとどまり、限定承認の効力には影響を及ぼさないものと解されており、また、本件譲渡は債務弁済のために行った正当なものであって、債務弁済後の残額を共同相続人間で分配したものであるから、「私にこれを消費」したことには該当しないと解され、請求人らの主張は採用することができない。
平成11年11月26日裁決




類似の国税不服審判所 公表裁決税務事例

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

相続税法第55条にいう「相続分の割合」とは、共同相続人が他の共同相続人に対して、その権利を主張することができる持分的な権利の割合をいうものとした事例


... ▼ 裁決事例集 No.69 - 235頁  請求人は、一部分割後の残余の未分割遺産に係る相続税法第55条の適用に当たっては、当該残余の未分割財産に法定相続分の割合を乗じた金額を課税価格に配分すべきで...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

遺留分権利者が遺留分減殺を原因とする土地の共有持分移転登記請求訴訟によって同土地の共有持分権を取り戻したことは、遺留分義務者の相続税法第32条第3号の更正の請求...


... ▼ 平成25年1月8日裁決 《ポイント》  本事例は、遺留分権利者が遺留分減殺請求の目的物について現物返還と価額弁償とを同時に求めていた場合において、遺留分義務者から現物返還が行われたことは...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...30100.html

価額弁済者も特段の事情のない限り、差押処分をした国に対し登記なくして対抗することができないことを明らかにした事例(不動産の各差押処分・棄却・平成26年2月19日...


... ▼ 平成26年2月19日裁決 《要旨》  請求人らは、原処分庁が、被相続人から請求人らが承継した滞納国税を徴収するため、請求人らが相続によって取得した各不動産の各共有持分を差し押さえた(本件...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

相続税法第34条第1項の連帯納付義務は、相続税徴収の確保を図るため、相互に各相続人に課した特別の責任であって、各相続人の固有の納税義務が確定すれば、他の共同相続...


... ▼ 裁決事例集 No.55 - 608頁  相続税法第34条第1項の相続税の連帯納付義務は、相続税徴収の確保を図るため、相互に各相続人に課した特別の責任であって、各相続人の納税義務の確定という事実が...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

共同相続人による国税の納付義務の承継割合は遺産分割の割合によるものではないとした事例


... 裁決事例集 No.1 - 3頁  共同相続人の納付義務の承継割合は、民法に規定する相続分の割合によることとなっており、たとえ遺産分割の協議で特定の相続人のみに相続させることとしても、納付義務の承継割...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

遺産分割調停中である場合には、相続税の更正等を行えないとする税法上の規定はなく、原処分は適法であるとした事例


... ▼ 裁決事例集 No.67 - 580頁  請求人は、遺産分割の基礎である贈与税及び遺産総額は調停内事実検証を踏まえて必然的に確定されるものであるから、更正処分は遺産分割調停の結果に従って行なわれる...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...70000.html

第三者に貸し付けられている被相続人と他の共同相続人との共有建物の敷地の評価に当たり、当該敷地には当該他の共同相続人の当該建物に係る地上権は存在しないとした事例


... ▼ 平成24年5月22日裁決 《ポイント》  本事例は、親族間で土地の無償使用を許す関係を地上権の設定と認めるためには、当事者が何らかの理由で特に強固な権利を設定することを意図したと認めるべ...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

請求人らが限定承認により相続した不動産を債務弁済のために譲渡したところ、原処分庁が所得税法第59条第1項の規定を適用して被相続人についてみなし譲渡所得の課税を行...


... ▼ 裁決事例集 No.58 - 97頁  請求人らは、限定承認により相続した不動産を債務弁済のために譲渡したところ、原処分庁は、所得税法第59条第1項の規定を適用し、被相続人についてみなし譲渡所得の...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

遺産分割協議において寄与分に応ずる財産が具体的に定められるとともに、一部の財産が協議の対象から漏れていた場合において、相続税法第55条の規定により相続税の課税価...


... ▼ 裁決事例集 No.75 - 546頁  相続税法第55条においては、民法の規定による相続分の割合について、同法第904条の2を除く旨規定しているが、その趣旨は、寄与分は、具体的には共同相続人間の...

詳細を表示する