▼ 裁決事例集 No.70 - 157頁 請求人は、[1]身体障害者更生施設は医療法にいう病院又は診療所ではないが、同施設では、医師及び看護師を含む施設職員により、入所者の更生に必要な治療又は指導及び訓練が行われていること、[2]所得税法施行令第207条は医療費の範囲を規定しているだけであって、対価の明示が医療費控除を受けるための要件であることを規定しているものではないことなどから、本件利用者負担額の全額が、医療費控除の対象となる医療費に該当する旨主張する。 しかしながら、所得税法第73条第2項及び同法施行令第207条の規定によれば、実質的にみて医療費に該当すれば、又は医療費に該当するものが含まれていれば、すべて医療費控除の対象になるのではなく、法令に定められた医療費の対価と評価できるものでなければ医療費控除の対象とはならないと解されるところ、本件利用者負担額は、その中には一部嘱託医師による診療や看護師による看護等の対価が含まれていると認められるものの、当該対価以外のサービスの対価と渾然となっており、それがどの部分かについてはその区分が明確でなく、医療費に当たる部分とそれ以外のものを区分する仕組みになっていない。 したがって、医療費外のサービスの対価が混在する利用者負担額全体を、所得税法第73条第2項所定の医療費の対価ということはできない。 また、請求人は、医療費控除の取扱いに係る法令解釈通達である平成12年6月8日付課所4ー9「介護保険下での指定介護老人福祉施設の施設サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて」において、指定介護老人福祉施設の施設サービスの対価の2分の1が医療費控除の対象とされていることから、この対価と性格が極めて類似する本件利用者負担額についても、最低その2分の1は医療費に該当する旨主張する。 しかしながら、指定介護老人福祉施設は、所得税法施行令第207条第3号に規定する診療所に準ずるものとして所得税法施行規則第40条の3第2項に規定された施設であることから、その施設の人的役務提供の一部が医療費とされているのであるが、身体障害者更生施設については、そのような法的措置は講じられておらず、また、指定介護老人福祉施設の利用者の負担額は、受益の程度に応じた負担を基本とする考え方に基づき算定されており、いわゆる応能原則がとられていないことにかんがみれば、本件利用者負担額と指定介護老人福祉施設の利用者の負担額を同質のものとみることはできない。 したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。 平成17年11月29日裁決 |
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