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▼ 裁決事例集 No.69 - 79頁
 請求人は、[1]本件貸付金は、永きにわたり主要かつ収益性のある顧問先に対し、資金の必要性を検討して金銭を貸し付けたものであり、この行為は請求人の本来の業務に付随するものであること、[2]本件顧問先に対して金銭を貸し付けることにより、本件顧問先が発展することは、請求人の職業上の利益を将来にわたり享受させるものであること、[3]税理士紀律規則第6条の2の規定があることをもって、請求人が本件顧問先に貸し付けた行為は税理士本来の業務に準ずる行為であること及び[4]所得税基本通達51ー10の(2)(以下「本件通達」という。)の「自己の製品の販売強化、企業合理化等のため、特約店、下請先等に貸し付けている貸付金」を「自己顧問契約の強化・企業合理化等のため、特約ある永年顧問先等に貸し付けている貸付金」と読み替えるべきであることから、本件貸付金は税理士業の遂行上生じたものであり、これに係る貸倒引当金については所得税法第52条が適用され、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入される旨主張する。
 しかしながら、所得税法第52条にいう「事業の遂行上生じた貸付金」とは、当該事業の遂行と何らかの関連を有する限りの貸付金のすべてをいうものではなく、その業種業態からみて、当該事業所得を得るために通常必要であると客観的に認め得る貸付金をいうものと解されるところ、[1]税理士としての請求人と本件顧問先との関係は、税理士法第2条(税理士は租税に関し税務代理、税務書類の作成、税務相談等の人的役務を関与先に提供し、報酬を得ることを業とする旨規定)に規定する業務の範囲を出ず、この範囲に金銭の貸付けが含まれないことは明らかであり、客観的にみて金銭の貸付けは、請求人の税理士としての事業所得を得るために通常必要な行為であるとは認められないこと、[2]たとえ請求人が本件顧問先に対して金銭を貸し付けることにより、本件顧問先からの税理士報酬の増加、すなわち事業所得の増加を期待し、現実に税理士報酬の増加があったとしても、それは派生的に生じた間接的結果にとどまり、本件貸付金は、税理士としての事業所得を得るために通常必要なものであると認めることはできないこと、[3]税理士紀律規則第6条の2の規定は、J税理士会が会員である税理士を対象として税理士の品位保持及び紛争防止のために慎むべき事項を定めた内部規則であり、当該規則をもって税理士に貸金行為を認める根拠であるとはいえないこと及び[4]本件通達は所得税法第51条第2項の規定の対象となる債権に限られることから、事業の遂行上生じた債権の範囲を例示したものであるところ、税理士の業務の範囲には金銭を貸し付ける行為が含まれないことは明らかであって、請求人の主張するように本件通達を解釈することはできないことから、本件貸付金については、請求人の事業の遂行上生じたものとは認められず、請求人が各年分の本件貸付金に係る貸倒引当金として繰り入れた金額は、請求人の各年分の事業所得の必要経費に算入することはできない。
平成17年2月23日裁決




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