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▼ 令和2年4月17日裁決
《ポイント》
 本事例は、法定単純承認事由となる相続財産の処分がされたか否かについて、請求人及び関係者の答述並びに帳簿等の広範囲な証拠に基づき、請求人が相続財産を費消(処分)したと認められるか否か、総合的かつ慎重に認定し、相続放棄の申述が有効であると判断したものである。

《要旨》
 原処分庁は、請求人名義の金融機関の口座(本件口座)に振り込まれた金員(本件金員)は、請求人の配偶者(本件被相続人)と本件金員の支払者との間の委任契約(本件委任契約)に基づき、本件被相続人に対する未払報酬が請求人名義の本件口座に振り込まれたもので、相続財産に該当するところ、請求人が本件金員を受領、出金及び返納した行為は、いずれも民法第921条《法定単純承認》第1号に規定する相続財産の「処分」に該当する旨、請求人名義の土地及び建物(本件各不動産)の取得資金は、本件被相続人が出捐し、又は本件被相続人の意思により関係会社等が支出していることから、本件各不動産は本件被相続人に帰属する財産であり相続財産に該当するところ、請求人が本件各不動産について、同条第3号に規定する「隠匿」及び同条第1号に規定する「処分」に該当する行為をしている旨、上記及びの事実は法定単純承認事由に該当するから、請求人の相続放棄は認められず、請求人は本件被相続人の納付義務を承継する旨主張する。
 しかしながら、については、本件金員が相続財産に該当することが認められるものの、本件金員が本件委任契約に基づいて本件口座に振り込まれたものにすぎず、請求人が出金した本件金員を一部でも費消した事実は認められないこと、請求人が振込名義人あてに送金したのは相続放棄の申述が受理された後であることから、これらはいずれも相続財産の処分には該当しないこと、については、本件各不動産が本件被相続人に帰属する財産であることを認めるに足りる証拠はなく、相続財産に該当すると認められないことから、本件金員及び本件各不動産について、請求人に法定単純承認事由に該当する事実はなく、請求人の相続放棄の申述は有効であり、請求人は本件被相続人の納付義務を承継しない。

《参照条文等》
 国税通則法第5条第1項、第2項
 民法第921条第1号、第3号、同法第938条、同法第939条、家事事件手続法第201条第5項、第7項

《参考判決・裁決》
 最高裁昭和42年4月27日第一小法廷判決(民集21巻3号741頁)
 大審院昭和5年4月26日判決(大審民集9巻427頁)





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