▼ 平成23年10月24日裁決 《ポイント》 この事例は、1年間に延べ半年近くにわたりG国に滞在し取締役社長として業務を行うなどしていた請求人の生活の本拠について、請求人の国内外での滞在日数、生活場所及び同所での生活状況、職業及び業務の内容・従事状況、生計を一にする親族の居住地、資産の所在、生活に関わる各種届出状況等を総合的に勘案し、日本の居宅にあったと判断したものである。 《要旨》 請求人は、G国に設立されたH社の取締役社長として同国に長期間滞在し同社の業務に従事しているから、平成21年においては、請求人がG国で起居していたd居宅が生活の本拠である旨主張する。 しかしながら、請求人は、平成21年中はほぼ毎月日本に入国し、その都度、半月程度又は1か月程度滞在し、年間の日本での滞在日数はG国での滞在日数を上回っている。請求人の生活場所及び同所での生活状況を比較すると、請求人が日本での滞在中に起居していた請求人所有のb町居宅は、請求人が日本へ入国した際のH社の業務や通院のために滞在する場所であるとともに、生計を一にする妻と同居して過ごす家庭生活を営む唯一の場所でもあり、請求人の全生活との関連が深い場所であるのに対し、G国のd居宅は、請求人が同国で業務を行う都合上滞在する場所であり、b町居宅と比べて請求人の全生活との関係は希薄である。請求人は、平成21年中延べ半年以上も日本に滞在しH社の業務を行っており、請求人のH社での業務はG国及び日本の双方で行っていたものである。請求人の妻は継続してb町居宅に居住し同所を住民登録地としている。請求人は、日本において居住用資産であるb町居宅を所有しているが、G国には不動産は所有していない。請求人は住民登録地をb町居宅の所在地とし、自身の公的年金等の各支払者に対して自己の住所を同所在地として届け出ているほか、日本国内で生活する上で有用な健康保険の被保険者の資格を保有し続けている。 以上の諸事情を総合すると、客観的に請求人の平成21年中の生活の本拠(全生活の中心)たる実体を具備していたのは、G国にあるd居宅ではなく日本のb町居宅であったと認定するのが相当である。 《参照条文等》 所得税法第2条第1項第3号、第5号、第5条第1項 民法第22条 《参考判決、裁決》 最高裁昭和29年10月20日大法廷判決(民集8巻10号1907頁) 最高裁昭和32年9月13日第二小法廷判決(裁Web、最高裁判所裁判集民事27号801頁) 最高裁昭和35年3月22日第三小法廷判決(民集14巻4号551頁) 最高裁平成23年2月18日第二小法廷判決(判時2111号3頁) |
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