▼ 平成25年11月28日裁決 《ポイント》 本事例は、請求人が確定申告書に記載した「還付される税金」を原処分庁が一旦還付した後に更正処分をしたことについて、当該申告書は請求人の妻が作成し、郵送で提出されていること及び税務官庁が当該申告書の作成を指導した事実が確認できないことから、当該申告書の作成について税務官庁が請求人に対して信頼の対象となる公的見解を表示したとは認められず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該更正処分に係る課税を免れしめて請求人の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情はないことから、信義則を適用する余地はないとしたものである。 《要旨》 請求人は、原処分庁が確定申告書(本件申告書)に記載された「還付される税金」と同額を還付しているなど、本件申告書の記載内容は適正であるとの公的見解を表示したものであるから、原処分庁の行った更正処分(本件更正処分)により新たに納付すべきことになった税額のうち、すでに還付した税額(本件還付金)に係る処分は信義誠実の原則(信義則)に反し違法であり、本件更正処分のうち本件還付金の部分は取り消されるべきである旨主張する。 しかしながら、本件申告書は、請求人の妻がパンフレットを見ながら作成し、郵送で提出されていること及び税務官庁が本件申告書の作成を指導した事実が確認できないことから、本件申告書の作成について税務官庁が請求人に対して信頼の対象となる公的見解を表示したとは認められない。また、原処分庁は、所得税法第138条《源泉徴収税額等の還付》第1項及び所得税法施行令第267条《確定申告による還付》第4項の規定に従い本件還付金を還付し、国税収納金整理資金に関する法律の規定に基づき国税還付金振込通知書を送付したに過ぎず、これらの事実をもって、税務官庁が請求人に対し本件申告書の記載内容は適正であるとの公的見解を表示したとは認められない。よって、請求人には、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお本件更正処分に係る課税を免れしめて請求人の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情はなく、信義則を適用する余地はない。 《参照条文等》 国税通則法70条第1項第1号 所得税法第138条第1項 《参考判決・裁決》 最高裁昭和62年10月30日第三小法廷判決(税資160号542頁) |
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