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▼ 裁決事例集 No.60 - 119頁
 請求人は、調査担当職員が、請求人から代理権を授与されていない請求人の父をして、本件修正申告書に請求人名義の署名、押印をさせ、これを提出させたものであるから、本件修正申告書は無効である旨主張する。
 しかしながら、請求人と請求人の父は、平成6年分以降、農業者年金を受給するため、農業所得の申告者の名義を請求人の父から請求人に変えたものの、農作業の従事の状況等確定申告に係る農業所得の金額の計算も、請求人の父が従前と変わらず行っているものというべきであり、さらに、請求人の父は、調査担当職員に対し、請求人名義の貯金通帳を提示し、請求人の各年分の所得税の確定申告書を町役場に赴いて作成、提出し、各年分の確定申告が過少申告となっていたことを自認し、請求人に迷惑を掛けたくないとして、請求人名義の署名、押印をしたこと、本件調査の全過程において請求人の父が対応していたこと、請求人は、農業について父に任せている旨述べたことからすれば、請求人の父は、請求人から、農作業及び確定申告に限って任されていたものとは考えられず、むしろ、農業に係る作業、申告に係る計算並びに確定申告及びその修正までを含めた税務上の全般の事務を任されており、請求人に代わってこれらを行っていたと認めるのが相当であるから、請求人の父が本件修正申告書に請求人名義で署名、押印をして、これを原処分庁に提出した行為の効果は、請求人に帰属するというべきである。
 重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて、隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税よりも重い負担を課することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止し、もって申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとする行政上の措置であり、納税義務者本人の刑事責任を追及するものではないことからすれば、その合理的解釈としては、隠ぺい、仮装の行為に出た者が納税義務者本人でなく、その代理人、補助者等の立場にある者で、いわば納税義務者本人の身代わりとして同人の課税標準の発生原因たる事実に関与し、同課税標準の計算に変動を生ぜしめた者である場合を含むものであり、かつ、納税義務者が納税申告書を提出するに当たり、その隠ぺい、仮装行為を知っていたか否かに左右されないものと解すべきである。
 これを認定した各事実に照らし判断すると、請求人の父の行った一連の行為は、国税通則法第68条に規定する隠ぺい、仮装に該当するというべきである。
平成12年10月23日裁決