▼ 平成23年12月6日裁決 《ポイント》 この事例は、遺産の全部を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言があった場合には、被相続人の死亡の時に直ちに遺産全部について分割の効果が発生し、当該遺産について再度の分割がなされる余地はないから、相続税法第32条第1号の規定の適用の前提を欠くと判断したものである。 《要旨》 請求人らは、本件遺言は相続分の指定をしたものにすぎず、当初申告における課税価格は、相続税法第55条《未分割遺産に対する課税》の規定に基づき本件遺言による指定相続分に従って計算したものであるから、請求人らを被告とする遺留分減殺請求訴訟において成立した本件和解により遺産分割が確定したとして、同法第32条《更正の請求の特則》第1号に規定する事由が生じた旨主張する。 しかしながら、遺産全部を一部の相続人に「相続させる」旨の遺言は、遺言書の記載からその趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情がない限り、遺産の分割の方法を定めた遺言であり、被相続人の死亡の時(遺言の効力の生じた時)に直ちに遺産全部について分割の効果が発生し、もはや当該遺産について再度の分割がなされる余地はなく、また、当該相続人に法定相続分を超える遺産を相続させることになるから、遺産分割方法の指定と同時に相続分の指定がなされたものと解すべきであるところ、本件遺言では、不動産8件を個別に掲記した上で、それらを含む一切の財産を「請求人らに各2分の1の割合で相続させる」旨記載されていること、他の相続人らには財産を相続させない旨の被相続人の意思が明確に表示されていることからして、本件遺言は、遺産分割方法の指定と同時に相続分の指定をしたものと解すべきであり、そうすると、本件被相続人の死亡の時に遺産全部について直ちに分割の効果が発生し、当該遺産について再度の分割がなされる余地はない。 したがって、相続税の申告書の提出時に本件被相続人の遺産の中に未分割のものはなく、相続税の課税価格が相続税法第55条の規定により計算されたものと認めるべき余地はないから、本件和解が、同条の適用があった場合に係る同法第32条第1号に規定する事由に該当しないことは明らかである。 《参照条文等》 相続税法第32条第1号、第55条 民法第908条 《参考判決・裁決》 最高裁平成3年4月19日第二小法廷判決(民集45巻4号477頁) |
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