▼ 平成23年11月17日裁決 《ポイント》 この事例は、滞納処分の前提となった課税処分に係る取消訴訟の裁判が係属している中で、滞納処分の取消しを求めて審査請求がされた場合において、いわゆる「執行不停止」の原則に従い、取消訴訟が係属中であっても滞納処分の執行・手続の続行は妨げられず、また、先行する課税処分が重大かつ明白な瑕疵により無効であるか、違法を理由として権限ある機関によって取り消された場合でない限り、先行する課税処分の違法性を理由として滞納処分の取消しを求めることはできないと判断したものである。 《要旨》 請求人は、本件差押処分の前提となった加算税の各賦課決定処分(本件各賦課決定処分)の取消訴訟の裁判が係属中で、いずれも違法な処分であるため、裁判で取り消されることが明らかであり、本件各賦課決定処分を前提とした、形式的な国税徴収法に基づく本件差押処分は、原処分庁の権限の濫用であり、不当な手続であるとともに、本件差押処分は、本件各賦課決定処分と密接に関連し、不可分の関係であることから、前提となる本件各賦課決定処分の違法性が承継され、本件差押処分も違法となる旨主張する。 しかしながら、行政事件訴訟法第25条《執行停止》第1項の規定により、本件各賦課決定処分の取消訴訟が係属中であっても、本件各賦課決定処分の効力は妨げられず、本件各賦課決定処分に係る納付すべき税額に基づき、滞納処分は続行されることとなるところ、原処分庁は、督促に係る国税が完納されておらず、裁判所からの執行停止命令もなされていないことから、滞納国税につき督促手続を経て国税徴収法第47条《差押の要件》第1項第1号の規定に基づき本件差押処分を行ったものである。 また、課税処分は、国税の納税義務を具体化し、その納付すべき税額を確定させることを目的とする処分であり、滞納処分は、既に具体的に確定した税額が納期限までに完納されない場合に、国税債権の強制的実現を目的とする徴収手続であって、両者はそれぞれ目的を異にする別個独立した行政処分であるから、違法性は承継されず、課税処分が重大かつ明白な瑕疵により無効であるか、違法を理由として権限ある機関によって取り消された場合でない限り、先行する課税処分の違法性を理由として滞納処分の取消しを求めることはできないと解するのが相当であるところ、先行する本件各賦課決定処分には重大かつ明白な瑕疵はなく、また、違法を理由として権限ある機関によって取り消された事実もないので、本件各賦課決定処分の違法性を前提とした請求人の主張はその前提を欠くものである。 《参照条文等》 国税通則法第105条第1項 行政事件訴訟法第25条 《参考判決・裁決》 平成14年12月11日裁決(裁決事例集No.64・126頁) |
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