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▼ 裁決事例集 No.54 - 344頁
 請求人は、土地及び建物の売買を取り決め、土地売買契約書と倉庫を建築して譲渡する建物売買契約書を取り交わしているが、国土法の規制により、勧告価格を超えて譲渡することができないため、本件倉庫を建築し、当初予定した利益相当額を確保することで合意したもので、実際の契約に基づき作成されており、この記載内容に事実と異なるものはないと主張する。
 しかしながら、[1]本件請負契約書に添付されたとする仕様書は存在しておらず、また、契約書の検査引渡しの時期は完成から10日以内と記載されているが、完成時に検査をして引渡しを受けた事実も認められない等、契約が実行されたとは、にわかに信用し難いこと、[2]契約金額の決済については通常あり得ない不自然な決済方法であること、[3]請求人は、工事の進行管理や関係諸官庁への手続きなどの事実行為を一切行っていないことが認められ、発注者としての危険と責任を負っていた客観的事実も認められないこと、[4]本件倉庫の売買先に対しては、積算根拠が細部にわたって記載されている見積書が作成されているのに対して、請求人の見積書には、ほとんどその記載がないことが認められ、そうすると、請求人の見積書は、その見積金額が本件建物売買契約書の契約金額と同額であるところから、この契約金額に合わせて便宜上作成されたものにすぎないと認められる。
 以上のことから、本件請負契約書は形式的に作成されたもので実体がなく、実質的には、倉庫の請負契約は請負業者と建物売買契約先との間で行われたと認められ、本件建物売買契約書の実体もありえない。
 そうすると、本件建物売買契約書は、本件土地の売買金額の一部を本件倉庫の工事代金に仮託するために形式的に作成されたとみるのが相当である。
平成9年7月2日裁決