▼ 令和元年5月16日裁決 《ポイント》 本件は、従業員等による横領があった場合の損害賠償請求権について先例が示した判断と基本的に同様の判断をしたものであるが、請求人の隠蔽行為があったと認められないこと等から、更正処分の全部又は一部、重加算税の賦課決定処分の全部又は一部及び青色申告の承認取消処分が取り消されたものである。 《要旨》 請求人は、請求人の従業員であった者(本件元従業員)が請求人の仕入れた商品を窃取してインターネットオークションで販売した取引(本件取引)による本件元従業員に対する損害賠償請求権(本件損害賠償請求権)の額は、本件取引の日を含む事業年度(本件事業年度)の終了時に確定できる状況になかった旨主張する。 しかしながら、本件損害賠償請求権の額は、請求人が本件事業年度の当時において仕入れに係る資料と売上げ及び棚卸しに係る資料とを照合し、窃取された商品を特定した上、その商品に係る価額等に係る資料を保全することで計算することのできた金額を上回らないものと認められるから、通常人を基準とすれば、本件事業年度においてその金額を把握し得ないとはいえず、また、本件損害賠償請求権につき権利行使を期待できない客観的状況があったとはいえない。したがって、本件損害賠償請求権の確定による収益の額を本件事業年度の益金の額に算入すべきである。 なお、本件元従業員の地位から、その行為が請求人の行為と同視されるとは認められず、請求人が法人税等及び消費税等の課税標準等及び税額等の計算の基礎となるべき事実を隠蔽したとは認められないこと等から、法人税の青色申告の承認取消処分を取り消すほか、法定申告期限から5年経過後の事業年度等の法人税等及び消費税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分の全部、法定申告期限から5年以内の事業年度等の法人税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分の一部並びに消費税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分の全部を取り消した。 《参照条文等》 国税通則法第68条第1項、第70条第4項第1号 法人税法第22条第2項、第4項、第127条第1項第3号 法人税基本通達2-1-43 《参考判決・裁決》 東京高裁平成21年2月18日判決(訟月56巻5号1644頁) |
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