▼ 裁決事例集 No.73 - 265頁 請求人は、解約合意書に補償対象期間の具体的な記載はないものの、賃貸借契約書には契約期間が明記されていることから賃貸借契約の終期までの残存期間である9年9か月を本件返還不要敷金等が補償の対象としているとみるべきである旨主張する。 しかしながら、臨時所得の範囲として、所得税法施行令第8条第3号は、不動産貸付業務に係る「3年以上の期間の不動産所得の補償として受ける補償金に係る所得」と規定しているところ、所得の補償とは、中途解約に伴い生じた逸失利益、すなわち不動産貸付業務を継続すれば得られたであろう所得の額を補償するものであり、その所得を得るために継続して生ずる費用、例えば、減価償却費、租税公課等の費用の額を併せて補償することが必要であると解するのが相当であるから、所得の額と費用の額の合計額、すなわち収入金額に相当する金額を補償して初めて所得の補償といえる。 これを本件についてみると、本件返還不要敷金等は、違約金名目ではあるが、その実質は、解約後の収益補償として支払われるもの及び解約に伴う諸費用の実費弁償として支払われるものから成っていると考えられるから、本件返還不要敷金等に係る所得が、臨時所得となる3年以上の期間の補償に該当するか否かを判断するためには、本件返還不要敷金等の金額のうち、上記に係る金額について、1年当たりの収入金額に相当する金額で除して補償対象期間を算定するのが合理的であると認められる。 そこで、本件返還不要敷金等の金額の全額を上記に係る金額と仮定して、本件返還不要敷金等の金額(18,111,800円)を1年当たりの収入金額に相当する金額(9,864,792円(中途解約時の月額賃貸料822,066円×12月))で除して補償対象期間を計算すると、約1年10か月となり、3年以上の期間の不動産所得の補償には当たらない。 したがって、本件返還不要敷金等に係る所得は臨時所得に該当しないことになるため、平均課税の方法により所得税の額を計算することはできない。 平成19年3月12日裁決 |
類似の国税不服審判所 公表裁決税務事例
不動産賃貸業を営む請求人が賃借人から敷金及び建設協力金の返還義務を免除されたことが、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分に当たらないとした事例
...
▼ 裁決事例集 No.76 - 555頁
原処分庁は、建物賃貸人である審査請求人が建物賃借人である滞納者から建設協力金等の残額の返還債務の免除を受けたことが国税徴収法第39条に規定する債務の免除に...
詳細を表示する
不動産に係る賃借物件の賃料として損金の額に算入される金額及び転貸物件の賃料として益金の額に算入される金額は、賃借契約及び転貸契約による減額後の月額賃料に基づいて...
...
▼ 平成30年6月15日裁決
《要旨》
請求人は、不動産に係る中途解約不能で、中途解約した場合に残りの賃借期間の賃料を支払うことになっている長期の賃料減額期間のある賃借契約(本件賃借契約)の場合...
詳細を表示する
設備の賃借及び転貸はいずれも法人税法上のリース取引に該当し、売買があったものとして処理することが相当とした事例(平成25年1月1日から平成25年12月31日まで...
...
▼平成30年8月23日裁決
《ポイント》
本事例は、請求人が、設備の賃借及び転貸のいずれも賃貸借取引として処理していたことに対し、原処分庁は、設備の賃借を売買取引、転貸を賃貸借取引として原処分を行...
詳細を表示する
建物附属設備のセール&リースバック取引を金融取引であると認定した事例
...
▼ 裁決事例集 No.64 - 324頁
請求人は、本件賃貸借契約は20年契約であるが、5年後にK社の関係会社へ譲渡することが可能であるというオプション付であること、6年目以降の賃料が不確定である...
詳細を表示する
化粧品の特約店等の店舗内に化粧品メーカー等が設置した広告宣伝用資産は無償貸与されたものではなく受贈益に該当するとした事例
...
裁決事例集 No.21 - 81頁
請求人と化粧品メーカー等との間で締結されたコーナー設置契約に、契約が終了したときは各化粧品メーカー等に本件広告宣伝用資産を返還する旨の定めがあるとしても、当該契...
詳細を表示する
不動産賃貸借契約締結に当たって、差入保証金の一部を返還しないこととしていた契約を、後日、中途解約の場合にのみ当該一部を返還しない契約に改めた場合、既往において課...
...
裁決事例集 No.35 - 87頁
不動産賃貸借契約の締結に当たって、「差入保証金のうち、10パーセント相当額を解約手数料として賃借人に返還しない。」旨の条項を含んだ契約をしておき、税務当局から指...
詳細を表示する
建物賃貸借契約の合意解約に伴う残存期間賃料は、中途解約に伴う賃料収入に対する補償であり、不動産の貸付けにより生ずべき収入金額に代わる経済的利益と認められるから、...
...
▼裁決事例集 No.78 - 114頁
請求人は、本件建物を処分する方法として、本件建物を売却し、その敷地について利用権を設定するとともに、請求人が支払うべき敷金及び保証金の精算をするという一連の...
詳細を表示する
賃貸借契約の中途解約に伴い賃借人に対し返還不要となった敷金及び建設協力金に係る所得は、3年以上の期間の不動産所得の補償に当たらないから臨時所得に該当せず、平均課...
...
▼ 裁決事例集 No.73 - 265頁
請求人は、解約合意書に補償対象期間の具体的な記載はないものの、賃貸借契約書には契約期間が明記されていることから賃貸借契約の終期までの残存期間である9年9か...
詳細を表示する
中途解約に伴い賃借人に対し返還不要となった敷金及び建設協力金は、不動産所得の収入金額に当たるとするとともに、当初申告で平均課税の適用をしていないことに「やむを得...
...
▼ 裁決事例集 No.67 - 135頁
請求人は、中途解約に伴い返還不要となった敷金及び建設協力金のうち不動産所得の収入金額とされるのは、賃料の減収による損失及び解約に伴う諸費用の実費弁償等とし...
詳細を表示する