▼ 裁決事例集 No.75 - 531頁 本件取得不動産には、被相続人に対する損害賠償請求権を保全するための仮差押えがされているのみであって、本件相続開始日現在、本件債務に係る留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権は成立しておらず、したがって、本件債務は、相続税法第13条第2項第2号に掲げる「その財産を目的とする留置権、特別の先取特権、質権又は抵当権」によって担保される債務には該当しない。 なお、請求人は、相続税法第13条第2項第2号の規定は、制限的ではなく、実質的に解釈して拡大適用する余地があり、本件債務は、本件取得不動産が仮差押えされ、弁済を迫られた結果としての債務であり、同号に掲げる債務と同様の負の効果を有しているのであるから、同号を拡大適用すべき旨主張するが、相続税法第13条第2項の規定は、制限納税義務者が相続又は遺贈により取得した財産から控除できる債務を限定的に列挙したものであるから、同項第2号の規定は、拡大適用すべきでなく、この点に関する請求人の主張を採用することはできない。 また、本件債務は、請求人がG社に対して支払義務を認めた被相続人の損害賠償債務であることから、本件取得不動産に係るその財産の未払取得代金、未払修繕費及び未払管理人賃金などその財産の取得、維持又は管理のために生じた債務には当たらず、相続税法第13条第2項第3号に掲げる債務にも該当しない。 請求人は、本件債務は、仮差押えされた本件取得不動産を財産として維持するための債務であり、同項第3号に掲げる債務に該当する旨主張するが、同号に掲げる債務とは、その財産の未払取得代金、未払修繕費及び未払管理人賃金など、その財産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務をいうものであるところ、本件債務は、本件取得不動産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務とは認められないことから、この点に関する請求人の主張には理由がない。 本件弁護士費用の内訳は、「本件損害賠償請求権査定申立の件」、「債務弁済契約公正証書作成の件」及び「不動産売却に関するアドバイス」に関するものであり、本件取得不動産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務とは認められないことから、相続税法第13条第2項第3号に掲げる債務には該当しない。 なお、請求人は、本件弁護士費用は、被相続人が生前に、自己の財産を維持し、保全するために要した費用に係る債務であり、請求人にとっても、同様に、相続した本件取得不動産を完全に自己のものとして維持し、保全するためのいわゆるひも付の債務であるから、仮差押えされた本件取得不動産を財産として維持し、保全するために生じた債務であり、相続税法第13条第2項第3号に掲げる債務に該当する旨主張するが、同号に掲げる債務とは、その財産の未払取得代金、未払修繕費及び未払管理人賃金など、その財産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務をいうものであるところ、本件弁護士費用は、本件取得不動産そのものの取得、維持又は管理のために生じた債務とは認められないことから、この点に関する請求人の主張には理由がない。 平成20年6月25日裁決 |
類似の国税不服審判所 公表裁決税務事例
被相続人の損害賠償債務は、制限納税義務者である請求人の相続税の課税上、控除すべき債務には当たらないとした事例
...
▼ 裁決事例集 No.75 - 531頁
本件取得不動産には、被相続人に対する損害賠償請求権を保全するための仮差押えがされているのみであって、本件相続開始日現在、本件債務に係る留置権、特別の先取...
詳細を表示する
遺産分割の際に支出した弁護士費用は、所得税法第38条に規定する「資産の取得に要した金額」には該当しないとした事例
...
▼ 裁決事例集 No.77 - 59頁
所得税法第38条第1項に規定する「資産の取得に要した金額」には、当該資産の客観的価格を構成すべき取得代金の額のほか、登録免許税、仲介手数料等の当該資産を取得...
詳細を表示する
兄の経営する会社の従業員に固定資産税及び修繕費の負担をさせて居住させていた土地建物は事業用資産に該当しないとした事例
...
裁決事例集 No.37 - 282頁
請求人が譲渡した土地は、その土地の上にあった建物と共に、請求人から管理を委任された兄がその経営する会社の従業員に固定資産税及び修繕費を負担させて居住させていた...
詳細を表示する
請求人が行った賃貸用マンションのシステムキッチン等の取替工事に係る費用は、当該マンションの価値を高め、その耐久性を増すことになると認められるから、修繕費ではなく...
...
▼ 平成26年4月21日裁決
《ポイント》
本事例は、新たなシステムキッチン及びユニットバスの取替えに要した費用が、賃貸用マンションの通常の維持管理のための費用、すなわち修繕費である...
詳細を表示する
鉄筋コンクリート造り店舗共同住宅の外壁等の補修工事に要した金員は修繕費に当たるとした事例
...
裁決事例集 No.38 - 46頁
資本的支出と修繕費の区分は、支出金額の多寡によるのではなく、その実質によって判定するものと解されるところ、本件建物の外壁等の補修工事のうち、外壁等への樹脂の注入...
詳細を表示する
財産分与を原因として行った土地の所有権移転は特有財産の譲渡に当たるとした事例
...
裁決事例集 No.8 - 6頁
請求人が取得した不動産については、その取得及び維持管理に関し配偶者の寄与、貢献があったとしても、当該不動産は名実ともに請求人の取得した財産であると認められているので...
詳細を表示する
買主に本件土地の所有権移転登記を了した後、当該土地の元所有者の相続人から提起された訴訟に係る弁護士費用は、譲渡費用に当たらないとして、請求人の主張を排斥した事例...
...
▼ 裁決事例集 No.51 - 139頁
請求人は、平成元年12月に本件土地の元所有者の相続人から提起された当該土地の所有権移転登記抹消請求訴訟(本件訴訟)に係る弁護士費用9,087万円のうち4,...
詳細を表示する
請求人らが土地の譲渡に際して支払ったコンサルタント料等は、譲渡所得の計算上譲渡費用に当たらないとした事例(平成23年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各...
...
▼ 平成26年6月4日裁決
《要旨》
請求人らは、共同住宅(本件建物)の敷地の用に供していた土地(本件土地)を譲渡した際に、親族が主宰する不動産仲介業等を営む法人(本件法人)にコンサ...
詳細を表示する
私道の評価において、一方が行き止まりのいわゆる袋小路であるにもかかわらず、不特定多数の者が通行の用に供されているとした鑑定評価額は採用できず、財産評価基本通達に...
...
▼ 平成23年6月7日裁決
《ポイント》
この事例は、評価対象地の地目は公衆用道路であるとしても、当該評価対象地は、道路交通法による位置指定道路(その維持管理は原則として所有者に任され、処分権が所...
詳細を表示する