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▼ 裁決事例集 No.69 - 363頁
 請求人は、E生命保険との営業社員契約等を根拠に、請求人はE生命保険に従属しており、また、同人の営業社員報酬を決定するのはE生命保険であることから、事業者でない旨主張する。
 ところで、消費税法第5条第1項は、事業者は課税資産の譲渡等につき消費税を納める義務がある旨規定している。
 また、事業者について、消費税法基本通達1−1−1は、事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいう旨定めているところ、消費税法にいう事業者に関する当該基本通達の解釈については、請求人及び原処分庁とも争いはなく、当審判所においても相当と認められる。
 これを本件についてみると、E生命保険は、請求人の仕事のための費用の一部を負担しているものの、請求人は、仕事として保険種類の販売を行い、契約を獲得するに当たり、当該仕事の遂行上の主要な費用である保険募集に係る車両関係費、旅費交通費、接待交際費等の全額を負担していることが認められる。
 確かに、[1]請求人はE生命保険G支社への週2回の出社が義務付けられていること、[2]契約第2条には、営業社員の制限事項が定められていることに加え、[3]就業規則には、服務の原則等の規則が定められていることなどにおいては、請求人がE生命保険の指示、命令を受ける一面があることは否定できない。
 しかしながら、[1]については、E生命保険が請求人に対し出社を求めるのは、主として営業販売促進を図る目的で行われる打合せ等のためであり、[2]については、契約第2条が保険業法その他関係法令上の要請によるものと認められ、また、[3]については、単に、営業社員の服務及び労働条件について定めたものであるのに対し、請求人の主要な部分である保険募集の地域、保険募集の相手及び販売する保険商品の種類の選択等の保険契約獲得の手段並びに月曜日及び木曜日以外の日の出社の要否、営業所外での就業時間の管理等については、請求人自身の責任と判断に委ねられているものと認められる。
 以上のことからすると、営業社員としての請求人は、自己の計算においてその仕事を遂行するものであり、また、役務の提供につきE生命保険の一般的な指揮命令下にあるということはできないから、請求人は自己の計算において独立して事業を営む者であると解するのが相当であり、消費税法上の事業者に当たる。
 また、請求人は、営業社員報酬に含まれる通勤手当等については、明らかに実費弁償又は社員サービスとして金銭補助であるから、課税資産の譲渡等の対価の額に含めるべきではない旨主張する。
 ところで、消費税法第28条第1項は、課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額とする旨規定しており、また、消費税法第2条第1項第9号は、課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち、同法第6条第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう旨規定している。
 これを本件についてみると、営業社員としての請求人が消費税法上の事業者に該当し、同人がE生命保険から営業社員報酬として支払を受けた研修手当が、課税資産の譲渡等の対価の額になると認められる以上、研修手当とともに営業社員報酬の一部として支払を受けている通勤手当等についても、その全額が課税資産の譲渡等の対価の額に含まれると解するのが相当である。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 さらに、請求人は、贈答用品等代金(E生命保険は当該代金を営業社員報酬から差し引いている。)に含まれる消費税額及び不動産貸付けにおける課税仕入れに係る消費税額については、報酬明細及び収支報告書により証明できるから、課税期間に係る課税標準額に対する消費税額から控除すべきである旨主張する。
 ところで、事業者が、消費税法第30条第7項に規定する帳簿及び請求書等を整理し、これらを所定の期間及び場所において、同法第62条に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれらを提示することが可能なように態勢を整えて保存しなかった場合は、同法第30条第7項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に当たり、同項ただし書にいう事業者が災害その他やむを得ない事情により当該保存をすることができなかったことを証明しない限り、当該保存がない課税仕入れ等の税額については、同条第1項の規定の適用はされないものと解されている。
 これを本件についてみると、[1]請求人は当審判所に対し、記帳代行会社の専属税理士から帳簿を返してもらったかどうか記憶がなく、また、不動産貸付けに係る帳簿はない旨答述していること及び審査請求書の「審査請求の理由」欄に調査担当職員が課税仕入れ等の税額に係る帳簿及び請求書等の提示を求めた際に記帳代行会社の専属税理士が書類を紛失して返却されていないため提示が不能であった旨記載があることから、調査担当職員から帳簿及び請求書等の提示を求められた際には、請求人は帳簿の提示が可能なような態勢を整えていなかったことがうかがわれ、[2]請求人は報酬明細及び収支報告書を提示しているとしても、これは帳簿とは認められないことから、課税期間の課税仕入れ等の税額に係る帳簿を保存していなかったものと認められる。
 そうすると、本件の場合、課税仕入れに係る消費税額について消費税法第30条第1項の規定の適用はない。
 したがって、仮に報酬明細及び収支報告書により課税仕入れに係る消費税額が計算できたとしても、当該消費税額を課税期間に係る課税標準額に対する消費税額から控除することはできないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
平成17年4月26日裁決




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