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▼ 裁決事例集 No.55 - 316頁
 請求人は本件土地を売却する契約をしたが、市街化調整区域に存する畑であった本件土地上に建物を建築できないことから、本件建物を請求人名義で建築した後、本件資産として売買の形式を採るとともに、本件特例を適用することにより租税負担の軽減を企図したものであり、本件工事請負契約書及び本件資産売買約定書に係る売買は真実の売買ではないとする請求人の主張は採用することがきない。
 請求人は、電気の使用開始が平成6年6月3日になったのは、請求人が入居したとする同年4月25日から6月3日までの間工事用配線を使用していたためであると主張しているが、建物が完成して入居した後1か月以上も工事用配線が存在することは通常考えにくく、むしろ、生活に必要な電気及び水道に加え、ガスの使用が可能となった同年7月2日以降が入居日と考えるのが自然であること及び同年4月25日には、電気、水道及びガスがすべて使える状態であったとする請求人の答述は信用できず、この点からも請求人の主張を採用することはできない。
 請求人は、生まれた時から本件資産の所在地と同じ町内に居住する両親及び弟と同居していたところ、結婚後の生活を営むために本件建物に入居した旨主張するが、通常、結婚が決まったとはいえ結婚前に、しかも建物完成前で、なおかつ電気及びガスが調う前に、それまで同居していた親元を離れ、急きょ独り住まいをしなければならない必要性はないものと認められ、仮に、住民登録の異動のとおり請求人が本件建物へ入居していたとしても、本件借入れの申込みは、請求人が本件特例の適用を受ける目的で行われていることから、請求人は本件建物へは本件特例の適用を受けるためのみの一時的な目的で入居したものと認められる。
 本件借入れを行った以前の段階で、すでに本件資産は売却する予定であり、購入者も決まっていたのであるから、請求人の婚約解消後は継続して生活することに堪え難い事情が生じたことから本件資産を売却したとの主張は採用できない。
 請求人の主張はいずれも理由がなく、本件建物は本件特例の対象となる居住用家屋とは認められないから、本件譲渡について本件特例を適用することはできない。
平成10年3月20日裁決