▼ 裁決事例集 No.75 - 1頁 原処分庁は、請求人は本件被相続人の遺産として本件被相続人名義の土地及び本件被相続人名義の預金のうち59,055千円(本件被相続人名義の土地と併せて「本件H名義資産」という。)を申告しており、相続人Kの被相続人に係る相続税の申告内容からも、本件H名義資産が被相続人の遺産であることについては、共同相続人の間で争いがなかったものと認められる旨主張するが、請求人は、本件訴訟において本件H名義資産は亡き実父Gの遺産であると主張し、Kは、本件H名義資産はすべて本件被相続人の遺産であると主張しており、両者がこのような主張を行うのは、請求人にとっては本件H名義資産が本件被相続人の遺産であると認められると、死因贈与契約公正証書が有効であるとの前提にたてば当該資産はすべてKに死因贈与され、請求人の相続分がなくなることとなり、また、Kにとっては、本件H名義資産が実父Gの遺産であると認められると、当該遺産は実父Gの共同相続人間で分割することになるため、Kが一人で本件H名義資産を取得することができないこととなるからである。そうすると、本件H名義資産の帰属について争いがあったと認めるのが相当であり、本件判決は、馴れ合いによる判決ではないことが明らかであるので、その実質において、客観的、合理的根拠を欠くような判決ではないことが認められる。 原処分庁は、本件H名義資産の購入資金が実父Gから出えんされていることを請求人は知っていたものと認められることなどから、国税通則法第23条第1項の規定による更正の請求が可能であり、同条第2項による更正の請求をすることはできない旨主張するが、請求人は、本件H名義資産には亡き実父Gの遺産が含まれている可能性があると考える余地はあったものの、請求人が具体的にその確証を有していたとは認められず、本件H名義資産をその名義のとおり本件被相続人の遺産として申告したとしても何ら不自然なものではないとするのが相当であり、請求人の申告時には予測し得なかった事由が後発的に生じたと認めるのが相当である。 原処分庁は、本件訴訟については、本件H名義資産の購入資金及び原資の出えん者がだれであるかを争ったものであり、本件判決はこれが示されたものであるから、本件H名義資産の権利関係の帰属を明確にするものではない旨主張するが、本件判決により、本件H名義資産は実父の遺産であることが確認され、さらに本件被相続人の遺産としての預金債権の帰属についても併せて判示されているのであるから、本件判決は、本件被相続人の遺産の範囲を確認するための権利関係の帰属に関する判決であり、本件判決により確定した内容は、申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実と異なるものであることが認められる。 平成20年4月25日裁決 |
類似の国税不服審判所 公表裁決税務事例
相続財産の一部は被相続人の遺産ではないこと及び被相続人と他の相続人との死因贈与契約は有効であるとした判決は、国税通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」に該...
...
▼ 裁決事例集 No.75 - 1頁
原処分庁は、請求人は本件被相続人の遺産として本件被相続人名義の土地及び本件被相続人名義の預金のうち59,055千円(本件被相続人名義の土地と併せて「本件H名義...
詳細を表示する
価額弁済者も特段の事情のない限り、差押処分をした国に対し登記なくして対抗することができないことを明らかにした事例(不動産の各差押処分・棄却・平成26年2月19日...
...
▼ 平成26年2月19日裁決
《要旨》
請求人らは、原処分庁が、被相続人から請求人らが承継した滞納国税を徴収するため、請求人らが相続によって取得した各不動産の各共有持分を差し押さえた(本件...
詳細を表示する
請求人名義で支払を受けた火災保険金の受取人は、請求人ではなく、代表者ら個人であるとした事例
...
裁決事例集 No.27 - 157頁
原処分庁が請求人の益金であると認定した本件建物の焼失による本件保険金については、[1]本件建物を請求人が売買・贈与等により取得したとする証拠がなく、請求人の資...
詳細を表示する
可分債権である貸付金債権については、可分債権であることをもって分割の対象とならない財産とみるのは相当ではなく、共同相続人間で実際に分割が行われた場合、実際に分割...
...
▼ 裁決事例集 No.74 - 274頁
本件は、原処分庁が申告漏れ財産が存在するとして第一次更正処分を行うとともに、遺産の一部未分割の場合には、分割済財産を特別受益と同じように考慮に入れ、いわゆ...
詳細を表示する
請求人ほか3名が相続した不動産の共有持分から生ずる賃料収入について、当該賃料収入の全額が請求人に帰属するものである旨の原処分庁の主張を排斥した事例(平成18年分...
...
▼平成27年6月19日
《要旨》
原処分庁は、請求人ほか3名の相続人らが相続した不動産の共有持分から生ずる賃料収入について、請求人が他の相続人ら3名に渡しておらず、また、その全額を請求人の不...
詳細を表示する
処分理由の提示が争われた事例(平成22年11月相続開始に係る相続税の更正処分・棄却・平成27年9月28日裁決)
...
▼平成27年9月28日裁決
《ポイント》
本事例は、処分通知書に記載すべき理由は、行政庁の恣意の抑制及び処分の名宛人の不服申立ての便宜という理由提示の制度趣旨を充足する程度に記載すれ...
詳細を表示する
未分割の相続財産の賃貸から生ずる不動産所得は相続分に応じて各共同相続人に帰属するとした事例
...
裁決事例集 No.26 - 31頁
請求人は、相続財産の分割については現在係争中で所有権の帰すうは全体として不安定であるから、不動産所得の納税義務は発生していない旨主張するが、未分割の相続財産の賃...
詳細を表示する
相続税法施行令第8条第1号に規定する判決は、請求人が訴訟当事者である判決に限られるとした事例
...
▼ 平成25年8月22日裁決
《要旨》
請求人は、共同相続人Eが原告となって提起した、相続財産として申告していた貸付金のうち原告の法定相続分に相当する金員の支払を求める貸金請求訴訟において...
詳細を表示する
請求人以外の共同相続人が行った相続財産の隠ぺい行為に基づく相続税の過少申告について、請求人に重加算税を賦課決定することができると判断した事例
...
▼ 裁決事例集 No.67 - 91頁
納税者が、第三者に申告手続を委任した場合、第三者が同委任に基づいて行った行為の効果は納税者に帰属するものであり、自己責任の原則からしても、第三者を利用するこ...
詳細を表示する