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▼ 裁決事例集 No.72 - 25頁
 請求人は、請求人の母親は請求人とは同居していないが、請求人が母親に住宅を提供し、費用を負担していることは、請求人が母親に対して月額約10万円程度の家賃相当額を援助していることになり、母親は請求人の扶養親族として認められるべきであるから、本件決定処分は違法である旨主張する。
 一方、原処分庁は、請求人は、住宅の固定資産税及び火災保険料の負担はしているものの、生活費の送金は行っていないことから、請求人と母親とは生計を一にするものとは認められず、母親は請求人の扶養親族に該当しないこと、また、請求人は平成17年2月にA社を退職しており、各年分の扶養控除誤りをA社において是正し、徴収不足税額を徴収することができず、この場合には所得税基本通達194〜198共−2のただし書により、A社に徴収不足税額の徴収を強いて追求しないものと考えられることから、請求人は、国税通則法第25条に規定する「納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかった場合」に該当し、本件決定処分は適法である旨主張する。
 しかしながら、所得税法第121条第1項には、その年中に支払を受けるべき給与等の額が2,000万円以下である給与所得を有する居住者で、一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について同法第183条又は同法第190条の規定による所得税を徴収された又はされるべき場合において、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であるときは、同法第120条第1項の規定にかかわらず同項の規定による申告書を提出することを要しない旨規定されている。
 また、源泉所得税と申告所得税との各租税債権の間には同一性がなく、源泉所得税の納税に関しては、国と法律関係を有するのは支払者であって、国と受給者との間には直接の法律関係は生じないものとされており(最高裁平成4年2月18日判決)、源泉所得税の徴収、納付に不足がある場合には、税務署長は、所得税法第221条の規定に基づき源泉徴収義務者たる支払者からその不足分を徴収することになる。
 なお、所得税基本通達194〜198共−2のただし書の取扱いは、あくまでも扶養控除等申告書等の記載事項に誤りがあったことによる徴収不足額の強制徴収に関するものであって、同取扱いの適用を受けることをもって、上記の給与所得者について確定申告を要しない場合の規定が排除され、所得税法第120条の規定が代替的に適用されるものではない。
 したがって、もともと所得税法第121条第1項の規定の適用を受ける者について国税通則法第25条を適用する余地はない。
 これを本件についてみると、請求人の各年分における所得税については、所得税法第121条第1項に規定する確定申告を要しない場合に該当することから、請求人につき国税通則法第25条に規定する納税申告書を提出する義務があるとは認められず、同条を根拠とする決定処分を行うことはできない。以上のことから、請求人の母親が請求人の扶養親族に該当するか否かについて判断するまでもなく、本件決定処分は違法であり、いずれもその全部を取り消すべきである。
平成18年11月29日裁決




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