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▼ 裁決事例集 No.69 - 125頁
 請求人は、当該支出が医療費控除の対象となるか否かについては、個々人の体質などの特殊性に応じて判断するべきであると主張する。
 ところで、医療費控除の制度は、医療費が多額で異常な支出となる場合における担税力の減殺を調整する目的で創設されたものであるが、医療費控除の対象となる医療費の範囲について規定した所得税法第73条第2項では、医療費控除に該当するべき医療関係支出を政令で定める旨規定し、同条を受けた所得税法施行令第207条において第1号から第6号にかけて限定的に列挙している。
 このことからすれば、これら医療費控除に係る租税法規の解釈及びその適用に当たっては、租税の公共性、課税の公平の原則を基本として社会通念に照らして合理的かつ客観的に解釈すべきものであるものの、個々の納税者の主観や価値観によって解釈を変更し、その適用範囲を拡大することを許しているものとは解されない。
 そうすると、施行令第207条において規定されている医療費とは、医師等の診療等に直接必要な費用及び治療又は療養に必要な医薬品の購入費等に限られると解すべきである。
 したがって、請求人の主張は採用することはできない
 上記の医療費控除制度の趣旨及び法条の解釈に基づき、当該支出についての検討結果は、次のとおりである。
 糖尿病及び高血圧症を持病とする請求人にとって食事療法のため医師から推薦をうけた(請求人主張)とするグァバ茶、クロレラ錠剤、お酢、梅エキス、ゆずエキス、乾燥ウコン、ウコン茶、鮫軟骨エキスなどの薬局等からの購入費用は、専ら健康の増進や体調の維持を目的とする健康食品や日常生活の用に供するものであり、医薬品には該当しない。
 糖尿病の運動療法のための運動用具(請求人主張)としてガスコンロの購入及び取付費用並びに糖尿病の薬が引き起こす便秘症状解消のためのトイレの改築費用(請求人主張)として自宅の改築材料の購入費用及び施工費用は、自宅の改築費用等であり、所得税法施行令第207条に規定する医師等による診療や治療などのために直接必要な医療用器具を購入したものとは認められない。
 糖尿病用の献立書の購入費用、請求人が入院中の妻の弁当代、家事雑貨品の購入費用は、所得税法施行令第207条に規定する医師等による診療や治療などのために直接必要な医療用器具を購入したものとは認められない。
 請求人の妻が入院する際に購入した衣料品の購入費用は、請求人の妻が入院した際に必要となったものだとしても、医師等による診療や治療などのために直接必要な費用とは認められない。
 請求人の妻が中国整体院において受けたマッサージ費用は、中国整体院の施術者があん摩師等の資格を有していないことから、所得税法施行令第207条に規定するあん摩師等に対する対価には該当しない。
 眼鏡の購入費用については、義手、義足及び松葉づえ等のように医師等の治療等を受けるため直接必要なものであれば、医療費控除の対象となるが(所得税基本通達73−3)、一般的な近視や遠視の矯正のためのものは医療費控除の対象とならない。本件の場合、請求人は、老眼を矯正するために購入したものと認められるが、老眼は身体上の機能障害であるものの、眼鏡等による視力補正を行うことが常態であること、眼鏡等の使用はその障害を治療するためのものではないこと及び請求人が医師等の指示に基づいて当該眼鏡を利用した治療を受けているとも認められないことから、医師等の治療等を受けるため直接必要なものの購入の費用とはいえない。
 温泉を利用した旅行のための支出については、医師が治療のため患者に対して温泉利用型健康増進施設として厚生労働大臣の認定を受けた施設を利用した温泉療法を行わせた場合の当該施設の利用料金(療養期間が1週間以上にわたる温泉療法が行われた場合に限る。)は、医師の治療を受けるため直接必要な費用として医療費控除の対象として取り扱われているが、本件の場合、請求人が医師からの指示に基づいて、病状に応じて特定された温泉地に赴いたものとは認められず、また、他に温泉を利用して何らかの治療又は療養を受けたことを裏付ける資料もないことから、これらの旅行を医師等による治療又は療養の一環として行われたものと認めることはできない。
平成17年3月15日裁決




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