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▼ 裁決事例集 No.63 - 212頁
 請求人は、破産管財業務が弁護士法第3条に規定する官公署の委嘱に基づく法律事務に該当しないので、破産管財人報酬は所得税法第204条第1項第2号に規定する弁護士の業務に関する報酬ではない旨主張する。
 しかしながら、もともと破産管財業務には法律的判断を伴う事務を行うことが予定されている上、本件破産事件において破産管財人に選任された請求人自身弁護士であり、かかる破産管財人には弁護士の中から選任されているのが破産実務の現状であること、本件破産管財業務をみると、売掛金請求訴訟や集合債権譲渡担保権者に対する否認権行使訴訟を提起するなど法律行為が含まれていることなどを総合考慮すると、請求人が行った破産管財業務は弁護士法第3条第1項に規定する官公署の委嘱に基づく法律行為に該当するものであるから、かかる破産管財人報酬は弁護士の業務に関して支払われた報酬であると認めるのが相当である。
 請求人は、破産管財人報酬は共益費用の性質を有する上、破産者は破産財団に属する財産に対して何ら権利を有しないことから、破産者に源泉徴収義務はない旨主張する。
 しかしながら、破産管財人の報酬は、財団債権として破産財団から支払われるが、この破産財団は破産者の財産であることには変わりがないことから、破産管財人の報酬の支払に伴う経済的出捐の効果が最終的に帰属する者は破産者であり、この意味において所得税法204条1項にいう支払をする者とは、破産者を指すものといわざるを得ない。ただ、破産宣告により破産財団に対する管理処分権は破産管財人に専属することになるところ、租税の申告納付は破産財団の管理処分の一環とみることができるのであるから、破産者の源泉徴収義務及び納付義務に関する手続は、破産管財人が負うものと解するのが相当である。
 請求人は、異議決定により本件納税告知処分の原因である「給与」の支払がないとされたのであるから、本件納税告知処分は違法である旨主張する。
 ところで、国税通則法36条2項は、納付すべき税額、納期限及び納付場所を納税告知書に記載すべきものとするにとどまり、受給者名、支払年月日など個々の源泉所得税を識別するに足りる事項の記載までは要求していないから、たとえ法定納期限、所得の種類等に誤りがあったとしても、告知額が正当であるときは、それだけの理由で当該納税告知処分が違法となるものではないと解すべきである。ただ、当該納税告知処分が源泉所得税の納税義務の履行を求めるものであることからすれば、当該納税告知書に記載された所得の種類、法定納期限、年月ごとの本税額等の事項から、客観的にこれに包含されるものと認識できる範囲(同一性が認められる範囲)を超えることは許されないと解するのが相当である。本件について判断すると、本件管財人報酬という同一の支払に係る同一の法定納期限の未納の源泉所得税が告知処分時に客観的に存在しており、所得の種類及び告知額の記載事項に誤りがあるものの、異議決定により減額された本税額等は再納税告知処分等の告知額の範囲内であることなどを考慮すると、本件においては、客観的にその対象となる支払が包含されているものと認識できる範囲(処分の同一性の範囲)にあると認められるから、請求人の主張は採用できない。
平成14年2月25日裁決




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