▼ 平成23年12月2日裁決 《ポイント》 この事例は、相続時までの土地の値上がり益という同一の経済価値に対する相続税と所得税の課税(譲渡所得課税)が容認されるか否かにつき判断したものである。 《要旨》 請求人は、相続により取得した土地の値上がり益のうち相続時までの増加額という経済的価値については、相続税の課税対象額とその後の譲渡所得の課税対象額に二度含まれることになり、同一の経済的価値に対する相続税と所得税の二重課税が生じることとなるから、所得税法第9条《非課税所得》第1項第15号により非課税とされるところ、非課税所得に該当した場合は、税法の適用上その所得がないものと同等に扱われるべきであるから、これを譲渡所得の収入金額に含めるべきではない旨主張する。 しかしながら、所得税法第60条《贈与等により取得した資産の取得費等》第1項は、居住者が同項第1号所定の相続(限定承認に係るものを除く。)により取得した資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算について、その者が引き続き当該資産を所有していたものとみなす旨規定し、いわゆる取得価額引継方式を採用しているところ、同条により、相続後に相続人が当該資産を譲渡した場合には、当該資産の譲渡による収入金額から被相続人の取得費を控除したいわゆる値上がり益について所得税が課されることになり、この値上がり益には、被相続人が当該資産を取得してから相続開始に至るまでの値上がり益部分も含まれていることからすれば、同条第1項は、当該値上がり益部分についてもまた、所得税を課すことを容認しているものと認めるのが相当である。 《参照条文等》 所得税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)第9条第1項第15号、第60条第1項 《参考判決・裁決》 最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決(民集64巻5号1277頁) 最高裁平成17年2月1日第三小法廷判決(訟月52巻3号1034頁) 最高裁平成4年11月16日第一小法廷判決(判時1441号66頁) |
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