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▼裁決事例集 No.79
 保険契約者が保険金の受取人を第三者とするいわゆる他人のための生命保険契約に基づく保険料の払込みは、保険会社に対して生命保険契約に基づく義務を履行するものではあるが、保険事故が発生したときに当該第三者に利益を与える目的を達成するために、自己の積極財産を減少させる行為であるから、保険金受取人は、保険事故が発生した場合、保険契約者の行った保険料の払込みという積極財産を減少させる行為によって、無償で保険金支払請求権を取得し、利益を受けたということができる。
 そして、保険金の支払請求権は、保険事故の発生により、保険金受取人が原始取得するものであり、保険金は滞納者である保険契約者からではなく保険会社から支払われるものであるから、滞納者である保険契約者が保険金受取人に対して直接財産処分行為をしたとはいえないが、国税徴収法第39条の条文からすれば、滞納者の財産処分行為と保険金受取人の受けた利益との間に基因関係が認められれば足り、滞納者が保険金受取人に対して直接財産処分行為を行っていることまで要するものではないと解するのが相当である。
 もっとも、国税徴収法第39条が、国税債権の確保のための詐害行為取消権の行使による逸出財産の取戻しを行うのと同様の効果を得ようとするものであること、同条にいう「無償譲渡等の処分」が、第三者に異常な利益を与える積極財産の減少行為をいうものと解され、本件のような被保険者が死亡した場合にその遺族に保険金が支払われる生命保険契約が、被保険者の死亡後における遺族の生活を保障するために締結されるものであり、保険料の払込みが当該契約に基づく債務の履行にすぎないことからすれば、保険契約者の職業や地位、資力、遺族の人数・年齢、国税の納付・徴収と保険料の払込みとの関係等を総合的に考慮して、当該保険料の払込みと保険事故発生後の保険金の支払が保険金受取人に異常な利益を与えるものであるといえない限り、保険料の払込みが国税徴収法第39条の「無償譲渡等の処分」に当たらないと解するのが相当である。
 これを本件についてみると、本件滞納者は、滞納国税のほか多額の債務を抱えていた状況の下で、本件各滞納国税のうち法定納期限が最も古い国税の法定納期限の1年前の日以後本件滞納者が死亡するまでの納付回数は6回にとどまる一方、国税の月平均納付額の倍以上の保険料を毎月継続的に払い込んだこと、請求人が受領した死亡保険金の総額が極めて多額であって、遺族が請求人と成人していた子であることからすれば、本件滞納者が請求人とともに事業を営み、相当の収入を得ていたこと、また、一般的には遺族を受取人とする生命保険契約が、被保険者の死亡後における遺族の生活を保障するために締結されるものであり、本件においても、本件滞納者の死亡後における請求人と子の生活を保障するものとして締結されたものであると考えられることを考慮しても、本件各生命保険契約に基づいて本件滞納者がした保険料の払込みは、請求人に異常な利益を与えるための積極財産の減少行為として、国税徴収法第39条の無償譲渡等の処分に当たるといわざるを得ない。
 そうすると、請求人は、本件滞納者が本件各生命保険契約に基づいてした保険料の払込みという無償譲渡等の処分により、本件滞納者の積極財産の減少額である払込保険料と同額の利益を受けたものと認められる。
《参照条文等》
国税徴収法第39条
平成22年3月9日裁決




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