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▼ 裁決事例集 No.65 - 833頁

 相続税の物納制度は、国税を金銭で納付するという原則に対して、相続税が財産課税であるという特殊性を考慮して設けられた特例的な制度であるということができ、物納申請財産を国に帰属させることは真の目的ではなく、相続税の単なる納付手段であり、国がこれを換価し、その代金をもって財政収入に充てることが真の目的であるといえる。そこで、物納申請財産は、その収納が金銭納付に代わるものである以上、国が物納された財産の管理・処分を通じて金銭の納付があった場合と同等の経済的利益を確保し得るものでなければならない。
 請求人は、原処分庁が本件物納申請土地について物納財産として不適当であると認定したことに対し、この理由は相続税法基本通達42−2に例示がないもので、相続税法第42条2項ただし書の解釈適用を誤ったものであり違法である旨主張する。
 しかしながら、本件物納申請土地内には、現に農業用水の取水の用に供されている流水路があり、その実質において地役権等の用益権が設定されている土地と同様の状況にあると認められ、また、当該流水路は、一部についてはヒューム管が埋設されているが、他の部分についてはなんら整備がされておらず、農業用水路として利用する上で、維持・整備のための新たな費用を要すると認められる。
 そうすると、本件物納申請土地は、その管理又は処分をするために費用を要し、このことは、国税の納付の趣旨に反することになり、管理又は処分をするのに不適当な財産であると認めるのが相当であり、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 請求人は、本件物納申請土地の評価額については、その立地、利便性、利用性及び換価性等の諸条件を織り込んだものとなっており、原処分庁が、金銭で納付があった場合と同等の経済的利益を確保できないとして、一つの課税とその納付手続において一物二価を主張することは、相続税法の予定する解釈に沿っておらず、また、本件物納申請土地は、その周辺の土地の売買実例もあることから、売却可能な土地である旨主張する。
 しかしながら、物納は、金銭による納付の例外として特に認められているものであるから、物納申請に係る財産が管理又は処分をするのに不適当であるか否かの判断に当たっては、当該財産の物納を受け、国がこれを管理又は処分をすることにより、金銭で国税の納付があった場合と同等の経済的利益を将来現実に確保することができるか否かという観点から判断されることになる。
 本件物納申請土地は、市街化調整区域内に所在し、また、土地のほぼ中央部に高圧線が架設されていることから、その開発及び利用におのずと制限を受けることとなり、国がその管理又は処分を通じて金銭で納付があった場合と同等の経済的利益を確保することは困難であると認められる。
 また、ある相続財産について、それが課税計算の基礎となった財産であっても、そのことから直ちに当該財産が物納財産として管理又は処分に適するということを意味するものではなく、管理又は処分をするのに不適当であるとされる場合もあり得るというべきである。
 請求人は、原処分庁が本件物納申請土地について、有効活用するためには整地が必要であること及び現状においてはその用途は極めて限定されると主張することに対し、原処分庁が本件物納申請土地の活用等についてまで判断すべきではなく、原処分庁の主張は、独断に基づくものである旨主張する。
 しかしながら、物納制度は、国が物納された財産の管理・処分を通じて、金銭による国税の納付があった場合と同等の経済的利益を確保し得るものでなければならないと解されるところ、本件物納申請土地が、将来、国が予定する管理又は処分に耐える財産に当たるか否かについて、管理官庁との協議を行うことには理由がある。そして、管理官庁との協議結果を踏まえ、本件物納申請土地は、管理又は処分をするのに不適当なものに該当するとしたことは相当と認められる。

平成15年5月20日裁決




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