▼ 平成23年2月1日裁決 《ポイント》 請求人に付与されたリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)とは、その付与日に議決権及び配当受領権を取得するものの、株券の受渡しは行われず、売却、名義書換、譲渡及び担保への差入れができないという譲渡等制限が付されたものであり、一定期間の勤務又は一定期間の勤務後退職し、かつ、勤務先グループの業務と競合する業務等を行わないという条件を満たした場合にその譲渡等制限が解除されるが、条件に反した場合には没収されるというものである。 この事例は、在職中に上記リストリクテッド・シェアを付与された請求人が、その後退職し、譲渡等制限が解除されたという事実関係の下で、このリストリクテッド・シェアに係る所得の区分及び収入計上時期につき判断したものである。 《要旨》 請求人は、勤務先の親会社から在職中に当該親会社のリストリクテッド・シェア(譲渡等制限付株式)を付与されたことによる本件所得について、特別な退職に際してのみ株式を支給するものであるから、本来退職しなかったとしたならば支払われなかったものであること、勤務年数及び年齢を支給基準としており、永年の勤務に対する報奨としての意図が明白であること、及び退職後は同業他社で働かないという条件を課すことで、実質的に引退することを強いており、請求人は現実に退職したことにより株式を支給されたのであるから、生活保障的な最後の所得でもあること等を理由として、退職後の年分の退職所得に該当する旨主張する。 しかしながら、請求人が付与されたリストリクテッド・シェアは、退職の事実の有無にかかわらず請求人が在職期間中に付与されたものであり、請求人が、仮に退職しなかったとしても条件を満たせば、没収されることなく本件所得を得ることができたことからすると、本件所得は、退職という事実によって初めて給付されたものとは認められず、また、親会社が、請求人の前年の業績に応じて賞与の一部として付与したものであり、請求人の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有するものとみることもできないから、本件所得は退職所得には該当せず、給与所得に該当する。 なお、本件所得の収入計上時期については、親会社がリストリクテッド・シェアを没収しないことを決定してその権利を確定し、譲渡等制限を解除した日において、請求人の株主としてのすべての権利が確定するから、その日の属する年分となる。 《参照条文等》 所得税法第28条第1項、第30条第1項、第36条第1項、第2項 《参考判決・裁決》 最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁)、最高裁昭和58年9月9日第二小法廷判決(民集37巻7号962頁)、最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決(民集32巻1号43頁) |
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