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▼ 裁決事例集 No.76 - 169頁
 請求人は、平成16年から平成17年までの間に、銀行の貸金庫に保管していた現金を、請求人が代表取締役を務める法人の従業員に窃盗されたが、当該損失は、その事実が発覚した平成17年分の損失であり、平成17年分の雑損控除の対象となる旨主張する。そして、原処分庁は、平成17年末の時点において、請求人は当該従業員に対して損害賠償請求権を行使しておらず、当該従業員から回収できる損害賠償額が確定していないので、雑損失の額が確定していないから、平成17年分において雑損控除の対象となる盗難による損失が生じたこととはならない旨主張する。
 しかしながら、所得税基本通達72-6において準用する同通達51-7によれば、損失の金額から控除すべき損害賠償金等が確定していない場合には、当該損害賠償金等の見積額に基づき損失が生じた年分の確定申告に反映させることとしており、後日、当該損害賠償金等の確定額と見積額が異なった場合には、そ及してこれを訂正する旨定めているところ、この取扱いは、損害賠償金等の確定の有無にかかわらず、損失が生じた年分において雑損控除を適用すべきであることを定めたものであり、当審判所においても、相当と認められる。したがって、盗難又は横領による損失については、損失が生じたそれぞれの年分において雑損控除を適用すべきであるから、この点に関する請求人の主張には理由がなく、当該従業員から回収できる損害賠償額が確定していない場合であっても、盗難又は横領による損失が生じた年分において雑損控除を適用するのが相当であるから、この点に関する原処分庁の主張には理由がない。
 また、請求人は、請求人名義の定期預金の更新手続を請求人が代表取締役を務める法人の従業員に任せていたところ、当該従業員が本件定期預金の一部を請求人に無断で解約し、これを横領されたから、請求人には雑損控除の対象となる損失が生じた旨主張する。
 しかしながら、所得税法第72条《雑損控除》第1項が規定する「横領」の概念について、所得税法に規定はなく、刑法上の横領罪にいう横領と同一のものと解するのが相当であり、本件定期預金の更新手続には、本件定期預金の通帳、銀行届出の印章及び定期預金の払戻請求書が必要であるところ、本件定期預金を払い戻すために最も重要な銀行届出の印章は請求人自身が持ち歩き、本件定期預金の通常の更新手続においては請求人が更新手続後の利率を確認した上で払戻請求書に銀行届出の印章を押印していたことが認められること及び請求人が当該従業員に本件定期預金を払い戻して現金を引き出す権限を与えていたとは認められないことからすれば、請求人は当該従業員に本件定期預金の管理を任せていたとは認められないから、本件定期預金について、請求人と当該従業員との間に横領の前提となる委託信任関係が認められず、当該従業員が本件定期預金の一部を払い戻し、これを費消した行為は横領には当たらないと判断するのが相当である。したがって、請求人の主張には理由がない。
平成20年9月19日裁決




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