TOP 開示資料 トピック 賠償事例 裁決事例 関係法令 法令翻訳 英訳情報 用語英訳


<<  戻る


▼ 裁決事例集 No.75 - 508頁
 遺産分割は、被相続人が遺言で禁じた場合を除く外、何時でも、その協議で行うことができるところ、仮に、遺産分割調停申立て前までに共同相続人間で相続に係る遺産分割が成立していないとすれば、請求人は、相続の開始及び相続不動産の存在を了知しており、かつ、兄が本件被相続人の遺産のすべてを事実上取得していることにつき不満を有していたのであるから、例えば、姉が兄に対し相続財産である別件土地の所有権移転を要求した時などに共同相続人の間で協議による分割請求を行うのが合理的な行動であると考えられるのにもかかわらず、請求人は、姉から一緒に兄に対し一緒に財産分けの要求をしないかと相談されたもののこれを断るほか、別件土地の所有権移転がなされた事実を確認した後、共同相続人間で何らの協議もしないまま、当該調停の申立てを行うなどの行動をとっている。
 
これに加え、共同相続人は、相続不動産のほとんどが農地であったために、農業を引き継ぐ長男である兄がすべての農地を含めて遺産を相続するものと認識しており、これは、被相続人の死亡の際には、生前に分与された残りの財産をすべて跡取りが相続するのが建前であったとされる本件相続開始当時における農家相続の実態調査等の結果にも合致するものであると認められること、相続不動産の一部が兄により売却され、請求人が現金の分与がないことに不満を持っていたにもかかわらず、その売却代金の帰属につき何らの異議も申し立てていないこと、相続開始後調停に基づく相続登記までの経過年数が41年11か月であるにもかかわらず、その間に一度も遺産の分割請求がなされないことは極めて不自然であると考えられることなどに照らせば、調停によって相続に係る遺産分割が成立したものとは認められず、かえって、遅くとも別件土地についての所有権移転の要求が姉から兄に対してなされた時までには、共同相続人間においては、相続不動産のすべてについて、兄が単独で相続することにつき黙示の合意があったと推認することができるというべきであるから、本件土地の所有権は、相続登記がなされているものの、請求人が兄から贈与により取得したものと認めるのが相当である。
 
そして、贈与により取得した財産の価額は、特別な事情がない場合には、財産評価基本通達により定められた評価方法によって画一的に財産の評価を行うのが相当であるところ、起業者による買取り等の申出に基づく売却予定価額は、贈与税の課税時期における時価としての客観的な交換価値が顕在化したものとまでは認め難く、また、財産評価基本通達により定められた評価方式で評価した場合の価額が買収予定価額に比べ著しく低額となることをもってしても特別の事情が存するとはいえないことに加え、当審判所の調査によっても、本件土地の評価に当たり、財産評価基本通達に定める評価方法を適用することが著しく不合理であるとする特別な事情があるとは認められないことからすれば、本件土地の価額は、評価基本通達によって評価した価額とするのが相当である。
平成20年3月28日裁決




類似の国税不服審判所 公表裁決税務事例

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

調停により遺産分割が行われた場合における相続税法32条第1号の更正の請求ができる「事由が生じたことを知った日」は調停が成立した調停期日の日であるとした事例


... ▼ 裁決事例集 No.69 - 252頁  請求人は、平成14年の調停期日では、遺産分割についての基本的な合意があっただけで、更正の請求のために相続税の課税価格を具体的に把握できるようになったのは調...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

土地及び建物に対する被相続人の共有持分は単なる名義上のものにすぎないとする請求人の主張を排斥した事例


... ▼ 裁決事例集 No.59 - 203頁  登記については判例において公信力を認めないと解されているところ、登記は、制度上その手続において、真正な、すなわち有効に存立する実質的な関係に基づくもので...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

本件被相続人の被相続人である母の相続に係る遺産分割協議書は真正に成立したものと推定されるから、請求人は、この遺産分割協議書に基づき本件被相続人が相続した本件土地...


... ▼ 裁決事例集 No.61 - 473頁  請求人は、本件被相続人の被相続人である母親の相続に係る遺産分割協議書は、分割の対象となる相続財産の記載に誤りがあるほか、共同相続人の一人であった本件被相続...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...20000.html

本件土地は、調停調書に記載の相続ではなく請求人が贈与により取得したもので、その価額は買収予定価額ではなく評価通達により評価した価額によるべきであり、また、その土...


... ▼ 裁決事例集 No.75 - 508頁  遺産分割は、被相続人が遺言で禁じた場合を除く外、何時でも、その協議で行うことができるところ、仮に、遺産分割調停申立て前までに共同相続人間で相続に係る遺産分...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

被相続人の先代の相続財産の遺産分割について、家裁の調停が成立し、代償分割による代償金を請求人らが受領したことは、被相続人が先代から相続により取得した代償債権を請...


... ▼ 裁決事例集 No.55 - 452頁  請求人らは、被相続人の先代の相続財産の遺産分割について、家庭裁判所の調停が成立し、代償分割による代償金を受領したことは、既に本件相続に係る相続税の申告に含...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

押印が漏れている相続税の申告書について、納税申告書としての効力が認められるとした事例(平成25年1月相続開始に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分・全部取消し...


... ▼ 平成27年4月1日裁決 《ポイント》  本事例は、納税申告書としての他の要件を具備している限り、押印がないことのみをもって納税申告書としての効力がないものとはいえないとしたものである。 《要旨》...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

遺産分割調停中である場合には、相続税の更正等を行えないとする税法上の規定はなく、原処分は適法であるとした事例


... ▼ 裁決事例集 No.67 - 580頁  請求人は、遺産分割の基礎である贈与税及び遺産総額は調停内事実検証を踏まえて必然的に確定されるものであるから、更正処分は遺産分割調停の結果に従って行なわれる...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

共同相続人による国税の納付義務の承継割合は遺産分割の割合によるものではないとした事例


... 裁決事例集 No.1 - 3頁  共同相続人の納付義務の承継割合は、民法に規定する相続分の割合によることとなっており、たとえ遺産分割の協議で特定の相続人のみに相続させることとしても、納付義務の承継割...

詳細を表示する

裁決事例 https://www.kfs.go.jp/service/...00000.html

可分債権である貸付金債権については、可分債権であることをもって分割の対象とならない財産とみるのは相当ではなく、共同相続人間で実際に分割が行われた場合、実際に分割...


... ▼ 裁決事例集 No.74 - 274頁  本件は、原処分庁が申告漏れ財産が存在するとして第一次更正処分を行うとともに、遺産の一部未分割の場合には、分割済財産を特別受益と同じように考慮に入れ、いわゆ...

詳細を表示する