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▼ 裁決事例集 No.75 - 481頁

 賃貸借契約は、民法第601条において、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことによって、その効力を生ずる契約である旨規定されており、両当事者の合意によって成立する。そして、土地の賃貸借契約が成立した場合には、特段の事情のない限り、当該契約成立の時に借主が借地権の設定を受けたとみるのが相当である。
 これを本件についてみると、Y社は請求人の父Eとの間で、平成13年5月24日に土地賃貸借契約を締結し、当該契約に基づき、平成13年6月分から、Y社はEに賃料の支払いを開始している。一方、当該契約の締結前に本件土地に係る賃料の授受がなされたことはなく、Y社とEとの間で、当該契約の締結前に土地賃貸借契約に係る基本的な事項である賃料の支払の有無、支払う場合におけるその金額、賃貸借する土地の面積及び賃貸借の期間等について、具体的に合意に至っていたとの事実は認められない。
 また、建物の保有を目的とする土地の賃貸借に当たり、権利金の授受を行うか否か及び授受を行う場合におけるその金額については、通常、賃貸借契約時までに両当事者間で取り決められるところ、本件においては、当該契約書に権利金授受に関する規定はなく、また、当該契約締結時までに、権利金の授受をしないとの取決めがあったと認められる証拠はない。しかしながら、権利金の授受について具体的な取決めをしないことは、本件が同族会社とその代表取締役の父との間の土地の貸借に係るものであることに照らせば、当該契約締結時までに権利金の授受を行うか否かについての取決めがなかったとしても何ら当事者に不都合はなく、特に不自然なものとも考えられない。
 そうすると、土地賃貸借契約書に権利金の授受の条項を設けない土地賃貸借契約を締結したことにより、権利金の授受をしないこと、すなわち、Y社がEから無償で借地権の設定を受けることが明確にされたと考えるのが相当である。
 以上のことから、本件土地に係る賃貸借契約が成立したのは、Y社とEとの間において当該契約を締結した平成13年5月24日と考えるのが相当であり、本件借地権は、本件土地賃貸借契約書における賃貸借期間の開始の日である平成13年6月1日に無償で設定されたということができ、この日が、請求人がEから贈与を受けたとみなされる日となる。
 財産評価基本通達185のかっこ書きの趣旨が、評価する会社が課税時期の直前に取得し価額が明らかになっている土地等については、純資産価額の計算上、その価額で行うことが合理的であるということに照らせば、少なくとも課税の基因となった無償移転に係る土地等について同かっこ書きを適用することは予定されていないと解されること、また、同かっこ書きは、「評価会社が課税時期前3年以内に取得した土地及び土地の上に存する権利等」と限定しており、会社に対し無償で財産の提供があった時に贈与があったとみなされ当該提供のあった日が課税時期となる本件のような場合においては、課税時期が同かっこ書きにおける課税時期前に含まれないことは文理上も明らかであることから、同かっこ書きは、本件のような課税時期において無償取得された財産については適用されないと解することが相当である。

平成20年5月30日裁決




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