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▼ 平成26年2月4日裁決
《ポイント》
 本事例は、真の所有者が不動産の名義をあえて他人に移転したことから、その他人の滞納税額のために当該不動産が差押えをされ、当該不動産の売却代金が滞納税額の支払に充てられたとしても、虚偽の権利の外観を自ら作出したことが原因であり、民法第94条《虚偽表示》第2項の類推適用により善意の第三者に対して対抗できなくなった結果にすぎないこと等から、所得税法第64条第2項の適用はないと判断したものである。

《要旨》
 請求人は、相続税の延納申請に係る担保として提供した土地(本件各担保土地)について、K国税局長がした差押登記は、請求人の知人が主宰するJ社の租税債権を回収するために、本件各担保土地の所有者である請求人の同意を得ることなく一方的にされたものであり、実質的には、請求人がJ社に支払能力がないと判断して債務保証をしたくないと考えても許されない状態での債務保証と同じであるから、所得税法第64条《資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例》第2項の規定の趣旨から救済されるべきである旨主張する。
 しかしながら、請求人は、本件各担保土地を取得してから譲渡するまでの間、同土地の真の所有者であったが、請求人の亡父等の多額の債務に係る各債権者の請求を逃れるため、請求人が、同土地の登記名義をJ社に変更して、虚偽の外観を作出していた際に、K国税局長が同土地を差し押さえたことが認められるところ、請求人は、当該差押えにより、本件各担保土地の譲渡代金の中から一定の支払がされるといった不利益を免れないが、この不利益の原因は、請求人が同土地につき虚偽の権利の外観を自ら作出したことにあり、当該権利の外観を信頼した善意の第三者に対して、民法第94条《虚偽表示》第2項の類推適用により、当該権利の外観が虚偽であることについて、対抗することができなくなった結果にすぎない。そして、虚偽の権利の外観を自ら作出した者は、当該権利の外観が虚偽であることを善意の第三者に対抗できないことを十分に予期し得るのであり、かつ、善意の第三者に対抗できないことについて明確な帰責性が認められるのであるから、このような者を、予期に反して求償権を行使することができなくなった場合の保証人と同一の利益状況にあるということはできず、課税上の救済を図る必要性は認められない。また、債権者との契約により債務の履行を強制されるわけではない点において、保証人や担保権設定者と立場を大きく異にしており、所得税法第64条第2項の規定を適用する前提を欠くというべきである。

《参照条文等》
 所得税法第64条第2項
 所得税基本通達64−4

《参考判決・裁決》
 さいたま地裁平成16年4月14日判決(判タ1204号299頁)
 静岡地裁平成5年11月5日判決(訟月40巻10号2549頁)
 東京地裁平成元年5月15日判決(裁Web)





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