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▼ 裁決事例集 No.72 - 89頁
(1) 請求人は、請求人の勤務する会社(内国法人)が属するグループを支配する法人であるH社(外国法人)から、同グループの従業員持株制度に基づき、請求人に無償でH社の株式を取得することができる権利(以下「本件アワード」という。)を付与されたことに基づいて生じる経済的利益(以下「本件経済的利益」という。)は、請求人が株式の売却申請を行った日に実現するから、当該売却申請を行った日が収入金額とすべき時期である旨主張する。
 しかしながら、本件アワードは、請求人の年間給与金額などに応じてH社から請求人に無償で付与され、条件が満たされると、グループの従業員持株制度の実施と管理を行う諮問委員会が決定する日(以下「本件決定日」という。)に権利確定するとしており、同日以後においては、請求人は受益所有権を有するH社の株式(以下「本件株式」という。)をいつでも売却することができ、本件アワード付与の基準日である適格日から本件決定日までに係る配当が支払われ、本件決定日以後の配当を受ける権利及び本件株式に係る議決権を行使できる権利も請求人に移転することが認められることから、本件経済的利益は、本件決定日に権利が具体的に確定したと認めるのが相当である。
 そして、請求人が本件決定日に得たものは、本件株式の同日における時価相当額の経済的利益(以下「本件権利確定益」という。)と認めるのが相当である。
 なお、請求人が行った本件株式の売却申請は、本件決定日以後に請求人が有することとなった本件株式に関する各種の権利のうち、本件株式を処分できる権利について、請求人が自らの投資判断に基づき、これを行使すべく手続をしたものにすぎないから、請求人の主張は採用できない。
(2) 請求人は、H社との間に直接雇用又は委任の契約関係はなく、また、本件経済的利益の発生原因は株価の上昇によるものであり、請求人の精勤とH社の株価の上昇とは直接関係せず、偶発性を有することから、一時所得に該当する旨主張する。
 しかしながら、本件アワードは請求人がH社傘下のS社ないしはT社(以下「勤務会社」という。)の従業員等であることを理由に付与されたものであること、本件アワードの権利確定は勤務会社の従業員等として一定期間の勤務をしたことによって可能となること、本件アワードは請求人に対し付与されたものであり、他人に譲渡することは禁止されていることからすれば、請求人は、勤務会社の従業員等たる地位に基づき本件株式を取得することができる権利を付与され、勤務会社の従業員等として一定期間勤務することにより本件権利確定益を得たものと認められるから、本件権利確定益は、請求人が専ら勤務会社に勤務することに基づいて得られる経済的利益であり、請求人の非独立的ないし従属的な人的役務の提供の対価としての性質をもった所得と認められる。さらに、本件権利確定益は、勤務会社からではなくH社から与えられたものであるものの、本件アワードは、グループ各社の従業員等の意欲を引き出すことなどを企図して設けられており、H社は請求人が勤務会社において勤務しているからこそ、請求人に対して本件アワードを付与したものであって、本件権利確定益は、請求人が職務を遂行したことに対する対価としての性質を有する経済的利益であることは明らかというべきである。
 したがって、本件権利確定益は、所得税法第28条《給与所得》第1項に規定する給与所得に該当するというべきである。
 なお、経済的利益を受けた者と当該経済的利益を給付した者に直接の雇用関係又は委任の契約関係がないことのみをもって給与所得該当性が否定されるものではなく、また、給与所得該当性の判断における人的役務の提供の対価性の問題は、従業員等の地位又は職務に関連してその労務の提供の見返りとして経済的利益を受けたものとされる関係があれば足り、人的役務の提供の質や量と給付との間に数量的な相関関係があることまでを要するものではなく、請求人が得るべきこととなった経済的利益の多寡が人的役務の提供の内容と関係ない要素によって左右されたとしても、本件権利確定益の給与所得該当性を否定する事情とはならないから、請求人の主張は採用できない。
平成18年8月23日裁決




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