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▼ 裁決事例集 No.75 - 725頁
 譲渡担保の目的とされた将来生ずべき債権については、遅くともそれが発生したときに譲渡担保権者に移転すると解されるところ、本件譲渡担保債権は、滞納法人についての破産手続開始決定前に発生し、債権譲渡登記により債権譲渡の対抗要件を備えていたことからすれば、本件譲渡担保債権は破産財団を構成しないものと認められる。
 
また、譲渡担保財産は完全に譲渡担保権者に移転するのではなく、譲渡担保設定者にも一定の物権が帰属するとの理論に立脚したとしても、破産手続において譲渡担保権は別除権と同様に取り扱われるものと解されていることからすれば、譲渡担保の被担保債権の弁済期が経過した後に設定者について破産手続が開始された場合、破産管財人は担保権者による別除権の行使としての譲渡担保権の実行を受忍する立場に立たされるものと解され、また、別除権者が法律に定められた方法によらないで別除権の目的財産を処分する権利を有するときは、裁判所は破産管財人の申立てによって別除権者がその処分をすべき期間を定めることができ、当該期間内に別除権者が目的財産を処分しないときに別除権者の処分権が失われることからすれば、譲渡担保の被担保債権の弁済期が到来した後に設定者について破産手続が開始された場合、その目的財産についての担保権者の処分権が失われるまでは、その目的財産の管理処分権が破産管財人に専属することはないと解されるのであるから、当該財産は破産財団を構成しないものと解される。さらに、国税徴収法第24条の規定は、すべての担保制度が租税の徴収の面からはできるだけ同一の取扱いを受けることが望ましいとの観点に立って設けられたものであり、その趣旨は、滞納者について破産手続開始の決定があった場合にも尊重されなければならないところ、別除権の実行が民事執行法その他の強制執行の手続に従って行われるときは、交付要求をすることによって国税が別除権の被担保債権に優先して配当を受けることになるが、譲渡担保の場合は、別除権の実行が私的実行の方法によって行われ、交付要求ができないため、破産手続開始後における譲渡担保財産に対する滞納処分が許されないとすれば、滞納者について破産手続が開始されたことによって、本来、国税に劣後して配当を受けるべきであった別除権の被担保債権が国税に優先して配当を受けるという極めて不合理な結果をもたらすことになるのであるから、破産手続開始後であっても譲渡担保財産に対する滞納処分は許容されると解される。
 
これを本件についてみると、本件債権譲渡担保契約に係る被担保債権は、滞納法人についての破産手続開始の申立てによって弁済期が到来し、請求人が本件譲渡担保債権の第三債務者に対して債権譲渡登記がされている旨を通知したことにより、譲渡担保権の実行を開始したと認められるのであるから、本件譲渡担保債権は、破産財団を構成するものではないと解され、原処分庁がした滞納処分は国税徴収法第24条の趣旨に沿ったものと認められるから、破産法第43条の規定に反しないというべきである。
 
なお、破産法第43条第1項にいう国税滞納処分とは、国税の徴収に従事する職員が自ら強制換価手続を行って国税の徴収を図る手続をいうのであるから、国税徴収法第24条第2項の告知処分が同条の国税滞納処分に当たらないことは明らかである。
平成20年3月3日裁決




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