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賠償事例 税理士職業賠償責任保険 事故事例(2019年7月1日~2020年6月30日) | 日税連保険サービス

法人所有不動産の売却にかかる税務相談に対する助言誤りにより、過大納付法人税額が発生した事例



【概要】
 税理士は、平成29年12月、依頼者法人から平成30年5月期の所有不動産の売却による譲渡損失計上(譲渡益が生じる不動産売却があるため、譲渡損失計上による税負担軽減効果を目的とするもの)のための譲渡方策について相談を受け、関係会社と役員個人のいずれに売却した場合も、譲渡損失計上額は同額となり、税効果は同じである旨回答した。
 その相談回答を受け、依頼者法人は関係会社へ譲渡損失が生じる不動産売却を、平成30年3月と平成30年10月に実行し、税理士は、平成30年5月期及び令和元年5月期法人税確定申告について、関係会社へ譲渡した不動産に係る譲渡損失を損金計上して申告書を作成提出したが、後日損金計上できないことが発覚し、依頼者法人から損害賠償請求を受けた。
 なお、平成30年5月期は法人税修正申告書により対応したが、令和元年5月期については、譲渡損益調整勘定繰入額よりも平成30年5月期修正申告に伴う事業税認容額が大きいため減額更正処分となった。


【詳細】
事故発覚の経緯
●令和1年8月、税務調査を受け、調査担当官から関係会社へ譲渡した不動産に係る譲渡損失については、グループ法人税制の適用があるので損金計上できない旨の指摘を受け、本件過誤が発覚した。

事故の原因
●依頼者法人から不動産売却による譲渡損失計上のため、関係会社と現社長へ譲渡の場合のそれぞれの税負担の相談を受けたが、税理士の勘違いによりいずれの場合も税負担は同じである旨の回答を行ってしまったため。
●税理士からの回答に基づき、依頼者法人は関係会社へ所有不動産の売却を実行した。税賠保険における判断
●譲渡損失計上額否認による税額は、本来納付すべき税額ではあるが、依頼者法人から事前に相談を受けた際に税理士が正しい法令取扱いの説明をしていた場合には、グループ法人税制の適用のない現社長個人への譲渡が実行されていたと認められること、また関係会社株式の一部譲渡による完全支配関係の解消策の採用についても可能であったと認められることから、譲渡損失計上額否認による税額について税理士に責任ありと判断された。
●所有不動産をどこに売却すれば税務上効果的か等の相談は、課税要件の事実発生前に行う税務にかかわる指導・助言に該当することから、発生した過大納付法人税額等は事前税務相談業務担保特約の保険金支払対象となった。

支払保険金
●過大納付法人税額約3,200万円より税効果による回復額約10万円を差し引いた約3,190万円を認容損害額としたが、税賠保険の支払限度額が1,000万円であったため、1,000万円が保険金として支払われた。
●なお、グループ法人税制においては、本件の譲渡損益調整資産が取得した関係会社から移転した場合、もしくは完全支配関係を有しないこととなった場合には、依頼者法人の譲渡損益調整勘定繰入額が損金算入されることとなるため損害が回復する。その場合は、支払われる保険金を返金することを条件に、保険金が支払われた。





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